名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2226号 判決
裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、訴因の追加、撤回又は変更を許さねばならないもので検察官は、これを為すには、刑事訴訟規則第二〇九条に定むる手続に従わねばならない。右のような適法な訴因の追加、撤回又は変更の請求があつたときは、裁判所は、自由裁量によりこれが許可又は不許可の決定を為し得るのでなく、必ず許さねばならないもので、許す場合には、刑事訴訟規則第二〇九条第四項により、検察官に訴因の追加、撤回又は変更を記載した書面を朗読さすればそれで、訴因が追加、撤回又は変更された効力を生ずるもので、裁判所の許可の決定によつてその効力が生ずるものでない。裁判所は、不適法な訴因の変更、追加又は撤回の請求があつたとき、検察官の請求を却下するか又は訴因の追加、撤回又は変更の効力を判決で認めないことができるだけである。本件においても、検察官が訴因の予備的追加か又は変更を為し、これが書面を朗読したことが明らかであるから、その効力があるものと解すべく、論旨は、理由がない。
同第二点について。
検察官作成の昭和二十四年十月十日附訴因(罰条)の追加(撤回又は変更)請求書と題する書面が、昭和二十四年一月十四日附の起訴状とどんな関係にあるのか、一見して明らかでないが、訴訟全体の経過から見て、検察官が右起訴状の訴因を修正したものであることが推察でき、その修正が、訴因の撤回でないことは、明らかであるが、訴因の変更と見るのか又は、予備的追加と見るのか、全く不明であることは所論の通りである。しかし訴因の変更と見ても、予備的追加と見ても或は両者を兼ねたものと見ても、本件においては、被告人の防禦権行使を著しく不利益にするものでないから、訴因の予備的追加として、訴訟を進行するのが、請求者である検察官の趣旨に合致するものと思う。右のように訴因が変更されたのか予備的に追加されたのか不明であつても、被告人にとつて防禦に不利を来たさないときは、訴因の予備的追加として、処理するのが相当である。原審としては、検察官に釈明して、この点を明確にすべきであつたが、これを怠つたことが、判決に影響すること明らかな訴訟手続違反であるとは考えられない。
(後略)
同第三点について。
(省略)
同第四点について。
従犯(幇助罪)は、正犯の実行を容易ならしめるもので、その方法に制限があることはない。通常窃盗の場合において、二人の者が相談し一人は窃み取る行為を担当し、他はこれが売却を担当する場合には、共同正犯が成立する場合があり、売却を担当した者を共謀による共同正犯と謂うのである。
然し売却を担当した者の地位が、従属的なもので、本犯と同等の立場にあると認むることができないときは、売却方を引受けた者は幇助犯と解すべきである。本件においては、被告人は正犯浅田稔が窃盗を完了した後賍品の売却方を引受けたのでなく、正犯が窃盗に着手する前に、被告人は正犯の依頼により、正犯が若しベルトを窃んで来たら、売つてやると引受けたのであるから、正犯の犯行を精神的に援助したものと見ることができる。従つて原審が幇助罪として処断したのは、正当で、論旨は理由がない。